ゲイ・バイセクシュアル男性が献血する理由

ゲイ・バイセクシュアル男性に向けて、献血行動と性の健康に関する調査を実施し、今後の対策に活かしていくことを目的として、アンケートを実施しました。9monsters上でゲイ・バイセクシュアル男性向けにバナー広告を展開し、参加者を募集いたしました。2016年12月3〜9日までの短い期間でしたが、2,200件を超える多くの方に回答いただきました。調査へのご協力をどうも、ありがとうございます。

アンケートの実施方法/分析対象
アンケートの実施方法

MSMを対象とした、無記名自記式ウェブ調査を実施
リクルート方法 : ゲイ向け出会い系アプリにウェブ広告を出稿しリクルートを実施した。
調査期間 : 2016年12月3〜9日(7日間) 質問項目 : 全55問(性行動、HIV検査行動、献血行動、知識)

本調査は、平成28年度厚生労働科学研究費補助金医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究事業「効果的な献血推進、および献血教育方策に関する研究(研究代表者:白阪琢磨)」の一環で実施しました。

研究分担者:生島嗣(特定非営利活動法人ぷれいす東京)
研究協力者:岩橋恒太(特定非営利活動法人akta)、市川誠一(人間環境大学)

アンケートの分析対象
有効回答は2,286件 ⇒ 分析対象は2,026件
本報告の分析対象は、日本国内に居住するゲイ・バイセクシュアル男性に限定する。
すでにHIV陽性を確認している回答者を分析対象外とした。

回答者のプロフィール

有効回答は2,286件 ⇒ 分析対象は2,026件
本報告の分析対象は、日本国内に居住するゲイ・バイセクシュアル男性に限定する。
すでにHIV陽性を確認している回答者を分析対象外とした。

年齢

  • 10代:39件(1.9%)
  • 20代:595件(29.4%)
  • 30代:612件(30.2%)
  • 40代:626件(30.9%)
  • 50代:139件(6.9%)
  • 60代:15件(0.7%)

居住地

近畿:354件(17.5%)/中国:96件(4.7%)/四国:32件(1.6%)/九州:231件(11.4%)/甲信越:35件(1.7%)/東海:246件(12.1%)/北陸:31件(1.5%)/北海道:97件(4.8%)/東北:90件(4.4%)/関東:362件(17.9%)/東京:452件(22.3%)

HIV検査の割合

これまで生涯にHIV検査を受けた割合と最後にHIV検査を受けた時期:ある70.7%/ない29.3%:過去1年以内56%/1〜2年前20%/3年以上前24%

献血経験の割合

これまで生涯に献血をした割合と最後に献血をした時期:ある66%/ない34%:過去1年以内22%/1〜2年前13%/3年以上前65%

集団献血経験の割合

これまで生涯に献血をしたことがある人のうち、
学校や職場での集団献血をした割合

ある:46% 職場44%/学校48%/献血イベント7%

献血経験のある人のうち、
自己申告制度(コールバックシステム)について知っている人は61%でした

ゲイ・バイセクシュアル男性が献血をする理由は何なのか?

自分の血液が役立ってほしいから58% 献血用の血液が不足していると聞いたから36%/社会の役に立ちたいから28%
  • 自分の健康管理のため27%
  • お菓子やジュースがもらえるから26%
  • なんとなく23.8%
  • 周囲からすすめられて5.9%
  • 誘われて断ることができなかったから4.3%

献血の動機として社会貢献に関するものが最も多くを占めていました。
また、集団献血を思わせる回答もありました。

HIV検査の目的でゲイ・バイセクシュアル男性が献血をどの程度利用しているか?

これまで生涯に献血を
したことがある人の割合

ある66%/ない34%

HIV検査の代わりに
献血を利用した割合

4.1%:15-24歳…1.8%/25-34歳…3.2%/35-49歳…4.2%/50歳以上…8.2%

※年齢別では統計学的有意差は見られませんでした

なお、日本赤十字ではHIV検査の結果について、献血をした人たちに通知をしていません。そのため、HIV検査の目的で献血を行うことは、献血の安全を守るためだけでなく、献血をした本人のHIV感染の確認のためにもならないため、避けるべきです。

献血経験のあるゲイ・バイセクシュアル男性と経験のないゲイ・バイセクシュアル男性に違いはあるのか?

少し難しくなるかもしれませんが、
これまでの生涯に献血をしたことがある人とない人に
どのような違いがあるか、このアンケートでは検討してみました。

つまり、献血をしたことがあるゲイ・バイセクシュアル男性は
どのような人たちなのか、
その傾向を描き出してみます。

「生涯にHIV検査経験があるか」という点で、献血経験がある人のうち74%がHIV検査を受けており、献血経験がない人の65%に比べて、有意に高かったです。

「いま自分がHIV感染しているか、その可能性をどのように自己評価しているか」という点です。献血経験がある人のうち85%の人が「ほとんどない」、「まったくない」と回答していて、献血経験がない人の81%に比べて、有意に高かったです。

このことからこのアンケートからは、
これまで生涯に献血経験のある人の傾向として、
「生涯でHIV検査経験」があり、
「HIV感染の自己評価」を
ほとんど、あるいはまったくないとしている人たちと
考えることができました。

男性同性間の性行為について献血の制限事項があるが、それをどこで知り、どのように評価しているか?

日本赤十字社では、
HIV感染に関連して献血を制限する条件として、
下記のように示しています。

「6ヶ月以内に次のいずれかに該当することがありましたか。
①不特定の異性または新たな異性との性的接触があった。
②男性同士の性的接触があった。
③麻薬、覚せい剤を使用した。
④エイズ検査(HIV検査)の結果が陽性だった(6ヶ月以前も含む)。
⑤上記①〜④に該当する人と性的接触をもった。」

「ある程度適切だと思う」46.5% 「とても適切だと思う」28%

アンケートの条件表現について

こうした条件の表現について
おおむね献血の制限事項の表現について
理解されているようでした。
一方で自由記述を見ると、
いろいろなコメントも寄せられていました。

「ゲイだから献血できないと言われている感じがする」 「セーファーなセックスをしていたり、検査を受けているのに受けられないのはなぜか」

献血制限について知った場所

献血場所57% 口コミ15%/HIVに関するニュース14%/日本赤十字のウェブサイト14%

このことから制限事項について、
献血の事前にもっと知ってもらう機会を増やす必要性があることがわかりました。

その他の主な制限項目は下記の通りです。
・3日以内に出血を伴う歯科治療を受けた
・4週間以内に海外から帰国(入国)した
・1ヶ月以内にピアスの穴を開けた
・今までに輸血や臓器移植を受けた
・今までにヒト由来プラセンタ注射薬を使用した
・今までに梅毒、C型肝炎、マラリア、シャーガス病にかかった
・中南米諸国を離れてから6ヶ月以上経過していない
など